「今週の生地」第6回目は書籍、広告、雑誌などでイラストレーションを手掛けるイラストレーター紙野夏紀さんのオリジナルテキスタイル「AROMATIC SPICES」をご紹介いたします。
「AROMATIC SPICES(ブルーグレー)」は、鮮やかな黄色と落ち着いたブルーグレーの組み合わせが目を引く生地。小さなたねや葉っぱなどが生地いっぱいに広がり、楽しげな雰囲気が感じられます。生地の名前にある「スパイス」のように、インテリアのアクセントに取り入れたくなるデザインです。
「AROMATIC SPICES」は、鎌倉・雪ノ下にあるクリエイティブスタジオ「Casa de paño(カサ・デ・パーニョ)」のオープン記念として行われた個展、「NATSUKI CAMINO TEXTILE AND COLLAGE EXHIBITION 2023 『うみとたね』」にて発表されたテキスタイルの一つ。海のそばで暮らす紙野さんが書き溜めてきた身近な風景や植物のスケッチをもとに、図案が描き上げられました。
紙野さんは2014年にドイツの美術出版社TASCHEN社発行の「ILLUSTRATION NOW! Vol.5」に、今世界で注目すべきイラストレーターの一人として取り上げられ、さらに2018年4月にはイタリアの国際コンペ(A’ Design Award)グラフィックデザイン部門において、風景画を描いたファブリック”Paper Trip”シリーズがブロンズ賞を受賞されています。
さまざまな企業、イベントの広告・ノベルティグッズを手掛けるなどイラストレーターとして活躍しながら、貼り絵やアクリルガッシュ、水彩などの技法を用いて製作したイラストを元に、オリジナルテキスタイルの制作もされています。今回ピックアップしている「AROMATIC SPICES」は、貼り絵を元に作られたもの。大きなロール紙に筆で色を塗り、裏面に絵を描き、それをひとつひとつ手でちぎります。その上からアクリルガッシュで細かな線や点を描きこんで完成させたデザインです。ひとつひとつのモチーフの輪郭は、ハサミやカッターなどで切りとったシャープな線とは異なり、紙を手でちぎって作り上げたからこそのゆがみ、味が感じられます。