今週の生地、第21回目は『アジサイ』をご紹介します。
ジメジメとした湿気と生ぬるい空気が漂う梅雨の季節。私たちが暮らす日本が、東アジアの一国であることをあらためて実感させられる時期でもあります。そんな梅雨空の街を歩いているとき、あるいは電車や車の中から、家の窓越しに外を眺めたときなどに、ふと、やさしい色合いの植物に目を奪われることがあります。今回ご紹介するファブリックのモチーフとなった植物、「紫陽花(アジサイ)」です。
花びらのように見える部分は、実は花を囲む萼(ガク)。この萼の色は、土壌の酸性・アルカリ性によって変化するという特徴があります。花は萼の中央にある小さな丸いふくらみ部分です。
江戸時代後期の浮世絵師、葛飾北斎による花鳥図シリーズの中に『
紫陽花に燕』という作品があります。餌を獲ろうとしているのか、あるいは雨の前触れなのか。躍動感のある筆致で描かれる低空飛行の燕の側には、グラデーションのような色彩の紫陽花が静かに佇み、「動」と「静」の対比とともに、梅雨時の空気感が伝わってくるようです。
紫陽花が印象的に登場する映画作品として、『
海辺のポーリーヌ』(エリック・ロメール監督)を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。ロメール作品は、空間に飾られた絵や家具の配置、フィルムから伝わってくるようなファブリックの質感、衣装の色合いやシルエットと身に着ける登場人物との関係性に至るまで、自然体の中に豊かで洗練された美しさが漂います。映画作品としてはもちろん、インテリアやファッションの参考としてご覧になったことのある方もいらっしゃるかもしれませんね。フランス・ノルマンディを舞台にしたこの映画では、夏の終わりの風景の一部として、紫陽花がしばしば印象的に写り込んでいます。
梅雨の湿り気をたたえた日本の風景にも、爽やかなヨーロッパの夏の空気にもすっとなじむ紫陽花の凛とした佇まいは、その土地ごとの気候や風景に寄り添いながら、美しさを引き立てる植物なのだと、あらためて気づかされます。
紫陽花をモチーフにしたレース生地は、光をやさしく取り込む透け感と、花びらのように浮かび上がる繊細な模様が、今の季節によく似合います。
デザインを手がけたのは、「点と線模様製作所」代表の岡理恵子さん。「窓辺に光を飾ることができるように」との思いで手がけられたとのことですが、思いがそのままカタチとなったようなファブリックです。
大きくてまあるい葉や、毬のように集まった花の部分をよく見ると、ところどころに透け感のある淡い紫の模様がアクセントとして散りばめられ、まるで星屑のよう。写真だと分かりにくいのですが、透けている透明部分にも上品な光沢感があり、霧雨や小雨が太陽光を浴びて、まるで宝石のように輝いているようにも感じます。

日差しや風を受けてふんわりと揺れる紫陽花の姿を思わせるこのレースは、お部屋にやさしい時間を運んできてくれます。カーテンや暖簾(のれん)として取り入れれば、窓辺にやわらかな光を届けてくれます。雨の日でも気分がふっと軽くなるような、涼やかでやさしい空間が生まれます。

さらにおすすめしたいのが、レース生地「アジサイ」を使用した、フロントレーススタイルの窓装飾です。
レースカーテンを室内側、ドレープ(厚地のカーテン)を窓側に吊るすこのスタイルは、カーテンを閉じたときにレースの模様が美しく際立ち、装飾性がぐんと高まります。
特に、アジサイのような淡く繊細な柄には、白やアイボリー以外の無地ドレープと組み合わせるのがおすすめ。背景とのコントラストが生まれ、レースの美しさがいっそう引き立ちます。

雨音に耳を傾けながら、窓辺にそっと浮かぶアジサイ模様のレース。
季節の移ろいを感じさせるファブリックで、お部屋の中に静かな美しさを添えてみませんか。