今月より「今週の生地」と題して生地を1つピックアップし、ご紹介してゆきます。今回はインド・ムンバイで40年以上続く工場を持ち、綿や麻などの天然素材をはじめ様々な生地をアメリカ、ヨーロッパ、中東など54か国以上に提供するインドを拠点とするブランド「Kiyarn(キヤーン)」より「ATHABASCA(アサバスカ)」をご紹介いたします。
ATHABASCA(ホワイト)は、目の粗いざっくりとしたベースにオフホワイトで模様が表現されたナチュラルな雰囲気の生地です。刺繍で描かれているのはユーカリのような丸い形の葉がたくさん枝についた植物模様。日本ではふろしきの柄などに見られる唐草模様のように、ぐんぐんと伸び広がっている様子が生地いっぱいに描かれています。
刺繍はインドで古くから存在し、数千年にわたる歴史を持っています。宮廷や宗教的な儀式、日常生活でも広く使われてきた背景があり、地域や民族などにより異なるスタイル、技法が存在します。
主に手仕事で行われ、豊かな色彩と複雑なパターンで構成されているのが特徴。モチーフには花や動物、幾何学模様などが用いられます。刺繍には鏡(ミラーワークと呼ばれ、美しい刺繍の中に小さな鏡を縫い付ける技術のこと。魔除けや民族の目印としての役割もある。)やビーズ、パール、金糸などで装飾が施されることも。
刺繍生地はプリント生地などに比べて製造に手間がかかるため、製品が高価になるケースがほとんど。輸入商品となるとさらにコストが上がります。しかし、Kiyarnはインドのムンバイに工場を持ち生地を直輸入、国内でストックしているため、価格面でも諸外国で作られた刺繍生地に比べてお手頃なところも消費者にとっては嬉しいポイントです。
インドで生産するメリットとしては
・労働力の豊富さ(人口が多く、熟練した職人が多数存在するため、高品質な製品の生産が可能)
・原材料の調達コストが抑えられること(綿やシルクなど刺繍に適した天然素材の生産地でもあるため)
・伝統的な技術と経験を活かした高品質な製品の生産が可能なこと(古くから刺繍の歴史を持ち、代々受け継がれてきた技術やデザインの知識があるため)
これらの要因に加え、生産施設やインフラの整備などにより効率的な生産が行える環境が整えられたため、諸外国に比べコストを抑えて良質な製品の生産が可能となっています。
ATHABASCAのリーフ模様は機械刺繍により作られていますが、よく見ると枝や葉を表現するために非常に細かな仕事がなされています。モチーフの繊細な表現からも、古くから手仕事で刺繍を行い培ってきた技術力の高さが表れているように感じます。
インドで生産される刺繍生地は様々なインテリアアイテムに使用され、豊かなデザインと高品質な製品により世界中でも人気を集めています。夏に向けてお部屋を彩るアイテムに涼しげなレース生地を取り入れる方も増えてくることでしょう。ナチュラルからモダンなスタイルまでどのようなインテリアにも取り入れやすい、さわやかで上品な雰囲気のATHABASCA。ぜひご自宅で刺繍生地のクオリティ、デザインの魅力を味わってみてください。