右も左も「今治タオル」の時代が落ち着き、最近は大阪の「泉州タオル」の反撃も始まったタオル業界ですが、産地名をブランドに冠する戦略は昔から。メガネの鯖江とかデニムの倉敷とか、日本人は割とこういうの好きですよね。とは言え実際今治タオルの品質基準たるやものすごくハードルが高く、そこら辺の景品タオルでは到底クリアできるものではありません。オーバースペック気味ではありますが、ここまでこだわったからこそ業界を席巻できたのでしょう。特にスペシャルな開発力を有するK社さんや、品質に関しては右に出るものがいないとさえ言われるY社さんは別格。どちらも日本が誇る、世界で認められたメーカーです。でも、あまのじゃくな私は「今治じゃなきゃタオルじゃない」的な風潮を少々冷ややか(嫉妬も少々)に受け流しながら、敢えて-以外-を数多く試しておりました。
画像は「今治タオル工業組合」公式サイトより http://www.itia.or.jp/brand/entry.html
そんなマイノリティ商品の中で、これは、と感動したのが名古屋にある旧知のメーカーさんにいただいたガーゼタオル。一般的なパイルのタオルと比べるとかなり薄いのにきっちり水分を吸収してくれるし、乾きも抜群に早い。夜は湯船に浸かって朝シャワー派の私は、夜使ったバスタオルをハンガーにかけておいて朝も使うので、乾きの速さはとっても重要なんです。
それに、とにかくかさ張らない。家族4人分毎日洗濯するものだからこそ(我が家の場合)、この「かさ張らない」というのは妻にとっては速乾性と同じくらい重要だったりするようです。
購入後しばらく続くパイル特有の毛羽も出ないし、洗うほどに肌触りはふんわり柔らかくなるし、「これは言うことないわ」と感激。
ただ1点、普通の無地だったんで、見た目がどうにも寂しい・・・
で、気に入ったデザインが無いのであれば作っちゃえ、ということで、タオル用ガーゼ生地の開発に取り掛かりました。
ガーゼも蚊帳生地のような1重(シングル)から最近は8重など、もはや数えるのも面倒くさい重ね技が見受けられますが、日常使いのタオル用途としてもっともいいバランスを探すことからスタートです。市販の生地やタオルを買い集め、日々使用&洗濯テストを繰り返すうちに、2重では吸水性が心もとなく、6重では乾きに少々不満アリ(あくまで個人の見解です)。麻の質感も魅力的だったのですが、柔らかさとコスト面で見送り。しっかり柄が表現できる糸の太さと密度を検証し、試行錯誤の結果「綿の4重ガーゼ」に着地したというわけです。
次に、生地を重ねることに生まれる「空気層」は、熱伝導率が低い=断熱性が高いという特性から適度な保温効果をもたらす点を、ブランケットとして活かすことにしました。もちろんガーゼケット1枚では、いくら空気層があったとしても通気性にも大変優れているので熱を逃してしまいます。だからこそ夏場はガーゼケットが大活躍してくれるわけですが、実は羽毛布団を併用し、空気層にふたをすることにより体温の暖かさがガーゼケットの4重の空気層に滞留することが実証されているそうです。
~ 夏は涼しく冬は温かい ~
ガーゼはもともと医療用として普及しただけに、なんて賢い生地なんでしょう!
主アイテムが決まったので、今度はデザインです。
両面使いのためプリントはやめて、複雑な柄が出せるジャガード織機を使用。ナチュラル感を重視し、縦糸は生成りで統一しました。縫製はデザインのアクセントにもなるメローロック仕上げを採用。
ブランケットは使用時のことを考え四辺に重みを出したかったのと、角を無くすためにバイアステープで巻きました。
厚みがあるにも関わらず密度が甘い生地なのでテンションをかけられず、裁断・縫製とも想像以上に苦戦しましたが、なんとか完成。
そして、最後は製品テスト。
出来上がったサンプルの使用と洗濯を繰り返し、色落ちや耐久性を確認します。
ちなみに下の画像は洗濯前と洗濯後の比較。
膨らみ具合がこんなに変わります。
「ガーゼのタオルなんて赤ちゃん用じゃないの?」
「ガーゼのブランケットなんて夏用じゃないの?」
などとおっしゃらず、食わず嫌いはもったいない、どうぞお試しください。
タオル=パイルとお考えのお客様は、最初は違和感があるかもしれません。もちろん全ての方にご満足いただけるわけではないでしょう。でも、その肌触りや乾きやすさ、軽さを感じていただくことで、ガーゼの魅力がお伝えできればと思っています。