今週の生地 第18回目は、炭酸テキスタイルの生地『YAMANAMI(ヤマナミ)』をご紹介いたします。
“春山淡冶(たんや)にして笑うが如く、夏山蒼翠(そうすい)にして滴るが如く、秋山明浄(めいじょう)にして粧うが如く、冬山惨淡(さんたん)として眠るが如く”
この一節は、 中国は北宋の画家 郭煕(かくき)による画論著書「臥遊録(がゆうろく)」で記されていたそうで、「山笑う」「山滴る」「山粧う」「山眠る」という俳句の季語の語源となった言葉です。
春は柔らかな陽光のもと山々が微笑むように芽吹き、夏は青々とした緑が滴るほどに生い茂り、秋は澄み渡る空気の中で鮮やかに紅葉が彩られ、冬は生き物の気配も薄れ、静寂の中で眠るように佇む——四季により変化する山の様子を詩情豊かに描いています。
たくさんの山々に囲まれた風景が描かれた『YAMANAMI』。この生地に広がる山々もまた、自然の息吹を感じさせる生地です。連なる山々のシルエットが織りなす景色は郭煕の述べる山の表情を表すかのように、それぞれが存在感を放っています。
イエローとターコイズブルーの配色が、日中の明るいパワフルさを表現した『YAMANAMI ヒル(YE×GR)』。
一方で『YAMANAMI ヨル(PU×GR)』では、陽が沈んだ後の静けさと神秘的な美しさが広がり、パープルとグリーンの落ち着いた色合いが夜の山々を包み込みます。
昼と夜で異なる表情を持つ『YAMANAMI』は、郭煕の言葉に倣って表現するならば、「昼山巍峨(ぎが)として煌めくが如く、夜山幽邃(ゆうすい)にして沈むが如く」
季語のように言うならば、「山煌く」「山沈む」といった言葉が似合うのかもしれません。
炭酸デザイン室を主宰する水野夫妻は、以前は山梨県・西桂町に、その後滋賀へ移住し、ご自身の制作したファブリックに囲まれた環境で創作活動を行っています。「YAMANAMI」は、かつて暮らした山梨のアトリエから見えた風景をもとに生まれたテキスタイルです。
生地のプリントは滋賀県のお隣、京都の捺染工場で熟練の職人の手によって丁寧に仕上げられています。どこを切り取ってもユニークな造形が楽しめるデザインは、小物づくりはもちろん、
照明や
tetraクッションといったインテリアアイテムとしてもおすすめです。
■今週の生地 VOL.18 YAMANAMI
生地幅:115cm
リピート:49cm
組成:綿100%
ブランド:TAN
SAN TEXTILE(タンサンテキスタイル)